「Spotifyにアップしたら音が小さくなった」という相談をよく受けます。これはラウドネス正規化という仕組みのせいです。知っておかないと、マスタリングで無駄に音圧を上げて、かえって音質を悪くすることになります。
ラウドネス正規化とは何か ¶
SpotifyやApple Musicなどのストリーミングサービスは、すべての曲を一定の音量に揃えて再生します。これをラウドネス正規化といいます。基準はLUFS(Loudness Units relative to Full Scale)という単位で表します。Spotifyは -14 LUFS、Apple Musicは -16 LUFS が基準です。この基準より大きい音源は自動的に下げられます。
音圧を上げすぎると何が起きるか ¶
「音圧戦争」と呼ばれる時代(2000年代)には、CDで音圧を限界まで上げることが流行しました。でも配信では、音圧を上げすぎると正規化で下げられるだけです。しかも、過度なコンプレッションで失ったダイナミクスは戻りません。結果として、音圧は下がった上に、音の立体感もない、という状態になります。
配信用マスタリングの目標値 ¶
Spotifyへの配信を主目的とするなら、統合ラウドネスを -14 LUFS 前後に設定します。トゥルーピーク(True Peak)は -1 dBTP 以下。Apple Musicは -16 LUFS が基準ですが、-14 LUFS でマスタリングしたものをそのまま使っても問題ありません(Apple側で下げられます)。当スタジオでは、納品前にiZotope Insight 2で数値を確認しています。
CDとデジタル配信で別マスタリングが必要か ¶
CDとデジタル配信では、最適なラウドネスが異なります。CDは -9〜-12 LUFS 程度が一般的で、配信用より音圧が高い。同じマスターを使い回すと、どちらかで妥協することになります。当スタジオでは、CDプレス用とデジタル配信用を別々に仕上げることを推奨しています。料金は1曲あたり ¥8,800〜 で、両バージョンの納品に対応しています。
マスタリングを依頼するときに伝えること ¶
マスタリングを依頼するときは、「どのプラットフォームに配信するか」「CDプレスも必要か」「参考にしたい曲はあるか」を伝えてください。これだけで、作業の方向性が決まります。ミックスデータはWAV(24bit/48kHz以上)で送ってください。MP3での依頼は受け付けていません。
ラウドネスの数値は、聴いた感じと必ずしも一致しません。数値と耳の両方で確認するのが、当スタジオのやり方です。